母船が月の裏側に入ると、電磁波の影響で通信障害が起きる
ベースが陰から出るまで、地球に降下させた部隊との連絡は取れない
ー まぁ、あれだけの戦力を投入したんだ、心配は無かろう・・ ー
戦闘力に特化しすぎた結果、報告連絡が疎かになる
と言うのは、地球の企業でもよく見られる光景だが
そんな時ほど、不測の事態と言う奴は起きるものなのだ
ドカーン!
朝のコーヒーを口からこぼし、黄子はお気に入りのスウェットを汚した
『なにごとなの?』
口調が古風なのは仕方が無い
そう言う生まれなのだ
黄子の実家は白壁土蔵群にある
時間の流れ方が他とは異なる地の出身なのだ
黄子が窓の外を見ると黒煙が立ち上っていた
最初に思い付いたのはガス爆発による火災だ
ー まさか、北からのミサイルでは無いだろう ー
一瞬不吉な想像が頭をよぎったが、すぐに消えた
炎がすぐそこまで迫っていた
え!
ええ!
えええ!?
なんなの?
なんなの? なんなの? なんなの?
!!?#$%
黄子が正気を取り戻したのは、視界の端に見慣れないカメの様なロボットを見付けたときだった
四本足の対地上用殲滅ロボット(通称カメ)
大きい!
ガメラくらいありそうだ
ガメラを知らない黄子はなんとなくそんな事を思った
ー 地球外生命体! 侵略者! ー
ふと我に返った黄子はテーブルの上のコーヒーまみれの台帳に目をやった
次にコーヒーのシミの付いたお気に入りのGlamorous スウェットを見た
『13,800円もしたのに・・・』
『今日は午後からデートなのに・・・』
正確には恋愛の伴うデートのそれではなかったが、少なからず黄子には乙女心を含んだ想いがあった
あわよくば、的なことを思わないでも無い相手だった
『帳簿も新しく作り直さなきゃいけないじゃない』
パソコンの苦手な黄子は経理仕事をすべて紙とエンピツでこなしていた
『そもそもなんなの今更・・・40年よ・・・私の青春をバカにして・・・』
黄子に理不尽な怒りが込み上げて来た
女性とは理屈じゃないのだ
フッと一陣の風が黄子の長い髪を踊らせた
つづく
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