ー 代々星を守ってきた由緒ある家系 ー
そんな時代錯誤なマンガみたいなものが本当に存在するのか?
事ある毎に黄子は自分に問いかける
『我が家は代々星を守ってきた由緒ある家系なのだ』
幼い頃からそう言い聞かされて育った
子供の頃は何も疑わず、ただまっすぐに修行に励んだ
しかし、いくら月日が流れても
母の言う星の危機とやらはやって来ない
『何も無いのが一番なんだよ』
それはそうだと思うが・・
では、自分は何の為に修行に明け暮れてきたのか?
来る日も来る日もひたすらに技を磨いて来た
恋人も作らず、結婚もせず、ただひたすらに・・・
気が付いたらもう四十だ
来るかも分からない侵略者とやらに費やした四十年
さすがに何かがおかしい
黄子はそう気付き始めていた
今日は珍しくオフの日曜日だったが
昼まで寝てやろうと思っていたのだが
前日の土曜日の夜に担当した結婚式が長引いたおかげで、夜に片付けようとしていた事務仕事が終わっていない
午後から用事があるから、早起きして片付けるしか無い
『店長に休みなど無いな・・』
黄子は誰にともなく呟いた
黄子はただヒーローをしている訳ではない
そんな訳の分からんことで食べてはいけない
倉吉駅から歩いて3分ほどの所にある美容室「ルーレク」の店長
それが黄子の世を忍ぶ仮の姿だ
売り上げの事だったり、更新の事だったり、融資の事だったり
従業員の事だったり、恋の事だったり、恋の事だったり、恋の事だったり
考える事は山ほどあって、いつの間にか星の守り手としての自覚は薄れていた
もはや現実はこっちなのだ
星だの侵略だのとマンガじみた戯言などどうでも良かった
ー 幸せはこれから捜そう ー
決意を新たにコーヒーを一口すすった
まさにその時、爆音が轟いた
つづく
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